2010.11.16 のニュース
原油高騰は金融的要因 ―イラン、問題あるも地政学的リスクは沈静化―
原油価格がWTIで87ドル/バーレル台と高騰している。中東産も86ドルと連動して値上がりをみせている。原油価格は「70~80ドルの範囲で推移することが産油国、消費国にとって受け入れやすい水準である」とみられている、4月が80ドル台であったものが5月から値下がり、10月までは70ドル台で推移していたが、11月に入って80ドル台に乗せ、ここにきて87ドル台となっている。
87ドル台は2年振りの高値であり、90ドルに接近してきた。新しく85~90
ドルという価格帯に入っており、90ドルを超えれば、100ドル説が出るものとみられる。原油価格が90ドル台に乗れば経済的な影響が出るため、政府も価格動向を警戒することになる。
最近の原油価格の高騰は、アメリカの金融緩和策を受けて資金が金などの商品市場に流れ、これに連動して原油相場も値上がりしてきた。株価も上昇しているが、ガソリン、中間留分の在庫が減少したこともあげられている。しかし石油の需要は、中国、インドの新興国は増加しているが、先進国は景気回復の遅れから停滞している。
10月のOPEC総会では、生産枠の据え置きを決めており、天坊石油連会長は「原油価格は需給面では大きく上昇することはない。引き続き金融的な要因で変動する」とコメントしている。需要期入り前にしており、今後の値上がりが見込まれるが、実際の石油需給を反映したものはなく、金融の思惑が絡んでの動きが影響している。
一方、中東情勢は比較的安定しており、地政学的リスクは沈静化している。ただ、アメリカはイラン核問題をめぐり、イランヘの経済制裁(CISAD)を7月に発効させている。この発効を受けて、EU、日本も対イラン制裁の「付帯措置」を発表し、日本政府は9月3日の閣議で追加制裁を決めた。イランのエネルギー部門への新規投資を禁止しており、メジャーの撤退が相次ぎ、石油製品の供給も停止している。これらの動きを配慮してか、国際石油開発帝石が推進していたアザデガン油田(10%の権益を保有)からの撤退となったようである。
イラン制裁によってイラン国内の経済が混乱し、原油の生産・輸出に影響が出れば、原油価格の高騰も予想されるが、イランも中国、トルコに支援を求めるなど対応しており、当面は混乱なく乗り切れそうである。中国は3大国営会社が精製、石油開発事業に参入するなど、西側の撤退をチャンスと捉えている。長期的にみればイラン経済にはマイナスとなるが、石油という資源を持っているため当面は対処できる。
一方、国内では原油価格が高騰すれば、石油開発業界、元売の石油開発事業は収入増となるため歓迎されるが、元売、販売業者はコスト増となり、不利な立場となる。
上期中は原油価格が値下がり局面となり、コスト安となったため、市況は値下がりしたものの、マージンは確保されて増益となった。減産により需給がタイトで推移したことが好材料となった。
石油開発は、上期で原油価格が小幅な値下がりとなったものの、76ドルという水準はコスト面(40ドル)からみれば利益が確保できる。そのため今年度上期は、元売、石油開発ともに利益が確保できたことになる。