2010.12.09 のニュース
年末商戦への事前総点検
原油が今年の最高値ゾーンヘと跳ね上がっている。
ドル建てでは最高値を更新し、過去最高値の150ドル相場の崩落過程で、現在の標準形の元祖となる週決め新仕切り体系導入直後の2008年10月初旬以来の高値となる。当時のガソリン小売平均は164.7円であった。
一方の円建てでは、輸出産業の経営努力を水泡に帰すような過去最高値ゾーンに居座る円高効果によって、今年の5月中旬以来、約7ヵ月ぶりの高値にある。この頃のガソリン小売は139.5円であった。
現在のガソリン小売価格は132円台にあり、この5月中旬と比較して平均7円割安になっている。5月下旬から10月上旬までの間、実に20週連続で値下がりした結果であり、それ以降も原油が騰勢に転じる一方で、小売は7週連続で横ばいまたは0.1円や0.2円という微騰にとどまったことが累積し、国内石油産業は、平均7円という負の遺産を溜め込んでしまった。
割安となった7円分は、ほぼその半分は卸が割安となったことで、精製元売に帰属する部分だが、残りの半分はSSに属する部分だ。ただし、10円近い小売下落が生じている東北や北陸では、SSに7円近い負の遺産が蓄積している勘定だ。全国に散在する小売激戦地の様相も、ほぼこれに近い症状にあるのだろう。
この1ヵ月間で4円高騰した原油の矛先は、9月までは好況を誇った精製元売の業績を全毀損するだけの威力を有する。したがって、元売はこの威力を卸に転嫁できる環境を整えようとするだろうから、SSは短期の原油変動見合い以上の上ぶれに直面する可能性も高い。多量で推移するガソリン在庫が減少に転じることが、原油見合い以上の卸高が出現するサインとなる。
現状よりも約3円割高だった今夏商戦の際のガソリン小売価格でも、天候要因とはいえ旺盛な需要に結び付いた。12月の気象庁予報では、関東以西は「平年よりも寒くなる確率が高い」というから、暖房カーエアコンも稼働する機会が増える期待があるが、数量よりもリットル粗利を増やすことが、年明けに出現する地下タンク規制の強化に備える自助努力の一歩となる。数量が伴えば、厳しさに曇る経営にも薄日がさすだろう。
卸コストが上昇に転じたこのタイミングに、上手に乗ることを心がけよう。