2010.12.16 のニュース
緊急時に備えるのはSSの基本
11月中旬に、東京都ハ王子市を中心に26万世帯が一時停電するという事態が発生、同市内の災害対応型SSである林商会・大塚SSが自家発電装置を動かし、SS機能を維持したことを本紙で紹介した。3年前に発生した新潟県中越沖地震の際、被災地城内で可搬式給油機などを備えたSSが、地震直後に準備を整えていたことなどを把握したことがあるが、今回の自家発電装置の稼働はまれな実証ケースで、改めて災害対応型SSの優れた機能を印象付けた。
SS業界の緊急時対応と言えば、県石油組合が自治体と締結している災害時協力協定がある。15年ほど以前に山形、福島、静岡などの締結をきっかけに、その後、想定される帰宅困難者の支援協定を含め、ほぼ全国的な動きとなった。ここ数年は、岩手に見られるように、組合の支部と市町村との協力協定へと緻密なネットワークに進化する一方、関西電力に続き海上保安庁と締結した和歌山の例のほか、林野火災を視野に入れた八王子支部と地元消防署の協力協定、愛知県豊橋市が進める災害時情報の収集と発信事業への豊橋石協の参加など、多種多様なSS業界の緊急時対応が出現している。
このほか、滋賀の甲賀支部が参加した地元自治体の防災訓練のように、地域活動の主要メンバーとなっての活動は日常化しつつあるし、万一に備えてAEDを設置するSSも増加している。また、津波への関心を高めるため、防火塀に海抜表示する高知のSSのようなユニークな試みもある。SS業界の緊急時対応は地震などの災害にとどまらず、エネルギーの供給不安という視点からいわゆる「SS過疎地」問題にも広がっている。災害のような突発性のものではないが、地域住民の生活維持が実態的に困難になりかねない社会問題に発展するのが「SS過疎地」である。これは緩やかであっても、致命的な災害に等しい。工ネ庁が「SS過疎地」が発生する要因やそのリスクを分析する研究会を立ち上げたのも、この問題が抱える深刻さが背景にある。
自然災害への備えと「SS過疎地」対策は、地域社会への打撃を最小限に抑え込むため、SSがその持てる機能を維持することによって、地域社会に役立とうというものとして共通する。給油、安全走行のほかに、SSには緊急時に発揮すべき機能がある。