日刊ニュース

2010.12.22 のニュース

増税分の転嫁は無理 業者が負担 ―環境税問題は決着 経産省主導を堅持―

政府は、平成23年度税制改正大綱をまとめ、石油石炭税の増税を決めた。来年10月から25銭/Lの増税をスタートさせ、さらに平成25年4月から25銭、27年4月から26銭と、合計で67銭を足かけ5年間に渡り3段階で実施する。施行時の25銭の増税は小幅であり、ユーザーに転嫁することは不可能とみられ、販売業者が負担することになりそうである。
 現実にSSでのガソリンなどの販売は、数量はリッター単位、販売価格は何円という単位で商売をしており、銭単位での価格は存在していない。そのため増税分の8銭/Lという価格転嫁は通常の商取引きではあり得ず、販売業者がかぶることになる。さらに、仕切価格が毎週改定され、銭単位で変動しており、このような状況下では25銭の増税分は仕切価格の変動帽の中で調整される。5年間かけて小刻みに増税されるため、販売業者にすれば自助努力で解決することは難しい問題である。そのため政府が転嫁できる方策を考えるべきであるという要望が出ている。来年10月の実施までには時間もあるため、政府も対応策を検討することになる。     
 初年度の増税分税収は830億円となるが、5年後の累計では670円/KLの増税となる。石油の他にLPGは780円/t、石炭も670円/tが増税される。増税による最終の税収規模は2400億円となる。現行の税収は4800億円(税額は2040円/KL)であり、増税分を加算すると7100億円の税収規模となる。
 増税分の扱いは現行のエネルギー対策特別会計(経産省が所管)に繰り入れられ、CO2削減対策に充当される。今回の石油石炭税の増税で環境省による環境税の創設構想は消えることになり、環境対策に絡んだ税制、予算確保の主導権は経産省が握ったことになる。税収は経産省が確保、その中から現行通り環境省に環境対策の予算を配分することになる。
 今回は石油石炭税の増税となっているが、増税を期に税の名称を変更することも検討する。この増税で環境税(温暖化対策税)の創設問題は、一応、終止符が打たれる。環境政策、予算の主導権を巡って経産省と環境省が対立していたが、今のところ経産省が勝ったことになる。
 この環境税構想は、民主党政権が打ち出した温暖化対策対策基本法の中に織り込まれているので、排出量取引制度、電力の全量買取制度の3点セットとなっている。基本法は国会に提案したが、審議に至らず成立の目途が立っていない。それでも3点セットのうち、税収(増税)、電力の買取制の方針が決まった。残る排出量取引制度は、審議を継続するが、方針の決定は先送りなる。COP16が何も決まらず閉会したこともあり、日本の25%削減の中期計画も基本法が成立していないため、流れは後退した。
 税収の使途としては太陽光発電や住宅の省エネ設備の支援、天然ガスの利用促進、次世代自動車の導入支援、バイオ燃料の導入支援、CCS・高効率水力発電の開発・実証、低炭素エネルギー技術・システムの海外実証などがあげられている。
 だが、すでに1兆円を超す予算を使っており、その精査が先決であるとして石油業界では増税に反対していたが、押し切られた。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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