日刊ニュース

2011.05.02 のニュース

石油火カヘのシフトに協力 ―石油業界、他油種の下落で業績悪化が心配―

 東電の福島原発、東北電の女川原発の事故で約1100万KWの稼動が停止しており、石油、LNG火力ヘシフトすることになる。
 エネ研の試算によると、石油へのシフトは、東電、東北電の両管内で4万~7万バーレル/日(年間で262万~424万KL)、その他、原発の定期点検延長、自家発電の増加などを加えると11万~14万バーレル/日増となる。LNGの増加は620~860万トンを見込んでいる。石油業界からは重油の受入増となり、国内での需給バランスの崩れが心配されている。
 原発事故による石油火カヘのシフトは、07年7月に発生した中越沖地震での東電柏崎刈羽原発の事故を経験している。当時は原発の不足分を石油がカバーしたが、今回も同じ対応が求められている。
 原発の不足分カバーをコスト面からみると、石炭、LNGの順で、最後が石油となる。石油は「最後となり、困った時の石油頼み」となっている。石油業界からは「常に一定の数量を確保するとの保証がないと、困った時のみに供給を確保することは難しい」と要請しているが、足元の石油の電源構成比率は約8%と低い。
 これは石油が他の電原に比べてコスト高であるのと、脱石油政策で石油火力の新設を認めていないことにある。そのため石油火力は操業を停止しており、予備として緊急時に備えているが、直ちに稼動できないケースが多い。また、環境対策、コスト面からも、石油火力を稼動していない電力会社もある。
 電源構成比では原発がトップで約30%を占めており、長期エネルギー需給見通しでは今後も原発を推進することなっていた。だが、今回の事故で見直しは必至となり、原発推進は後退するが廃棄もできず、今後原発政策をどうするかは復旧を待って議論することになる。
 当面は、今夏の電力需要をどうカバーするかにあり、東電ピーク時の需要が6000万KWで、うち1000万KWが不足するとされている。そのため火力発電の増強、25%節電などの推進計画が検討されており、産業界も協力することになる。
 石油業界は電力向けの石油供給には万全の対応で臨むが、重油の増産によるガソリン、中間留分の供給過剰を懸念している。そのため、原油の生だき、LSC重油の輸出増で対応し、さらに不足分を国内生産で対応することにしている。ただ、電力向けのSL原油の手当てが困難となっている。インドネシアでの原油生産は落ち込んでおり、他の産油国からの供給となる。
 国内対応では、C重油の増産はどうしてもガソリンなど他油種の供給増となる。大震災後、ガソリンは20%程度の減販となっており、供給増から業転市況は下落傾向にあり、石油業界の業績が悪化する。
 一方、電力用のLSC重油価格は、コストが保証されたフォーミュラで値決めされているため、取引きとしては成立している。4~6月の打ち出し価格は7万4540円/KLで大幅な値上がりとなっている。コストとなる南方原油のCIF価格は6万6000円で試算している。
 他の燃料油の市場連動制とは違い、ある程度のマージンが見込まれるため供給することになる。その結果、他油種が下落するマイナスをかぶることになりジレンマが生じる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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