2010.07.23 のニュース
時評 来年度税制改正でヒアリング ―環境税議論も前哨戦に入る―
経産省は、来年度の税制改正要望の意見を広く国民(個人)、企業、団体から募集、8月には公開ヒアリングを行なうことになった。この税制改正要望をオープンにしたのは、昨年、民主党政権が発足したのを機に官から民へという政治主導の一還とし打ち出されたもの。以前は財務省と経産省など各省庁が密室で折衝して決めていたものを政治(政務3役=大臣、副大臣、政務官)が全面に出てオープンに審議することになり分かり易くなった。同時に関心のある国会議員も出席した。官と官が決めていた税制、予算の決定過程が明らかになり、それなりの評価を得た。
今年も同様な方式で税制要望ヒアリングを実施することになるが、参院選での民主党敗北で与党が過半数を割るねじれ国会となったため、この場での審議結果がそのまま採択されないことも予想され、トーンダウンしそうである。
今年度の予算、税制は、前自民党政権が昨年8月に提示したもので、9月に政権が交代したが、時間的に余裕がなく組み替えができず、ほぼ自民党案を採択している。その意味では来年度予算が、初めての民主党案となるため、政権党色が出ることになる。
石油対策の来年度予算要求となると、新政策はないようである。すでに今年5月の事業仕分けで、販売業界に対しての災害対応型SSへの補助金の廃止、販売業者の経営高度化補助事業の廃止、エネ研が実施している石油製品市況調査の廃止が決まっている。これらの事業廃止は無駄であるとの判断が下され予算の削減となったが、短時間の審議で決まったとして販売業者からは反発が出ている。
事業仕分けの対象になる事業として、事業仕分け人が選んだことになるが、事業内容を理解するにも時間がかかる。また、経産省内でも審議したことになっているが、背後で財務省が仕組んだのではないか、との見方も出ている。
また、来年度予算の目玉は、温暖化対策税(環境税)の取り扱いとなる。温暖化対策基本法は参議院で審議ができず廃案となっているが、すでに閣議で決定されており、環境税を導入することを前提に審議することになっている。石油業界、産業界は反対しているため、経産省は難しい立場にある。民主党政権では、すでに閣議で環境税導入の方針を決めているため、産業界が反対しても、経産省としてこれを支持することはできない立場にある。自民党政権時代は環境税構想が環境省から再三提示されたが、産業界の意見を組み入れて経産省は反対の立場を取っていた。環境税を創設しても、その予算を使う方策はない。環境技術開発は、すでに経産省で実施している。増税による消費の抑制効果を狙ったが08年の原油急騰(WTIで145ドル)、ガソリン185円の高値を経験したため、効果がないことが実証されたと反論していた。しかし、民主党政権ではCO2などの25%削減が目玉策となり、環境税導入の方向が決まっている。最終的には年末の政府税制調査会で決まるが、これから前哨戦の開始となる。政府決定で経産省が動くことはできず、石油業界も厳しい状況にあるが、参議院で過半数割れとなったことから修正案も出るのではとの見方も出ている。