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「水素でエネルギー大国に」 2004年01月13日更新

日本は経済大国と言われているが ことエネルギーに関しては 後進国である。
石油 石炭 天然ガス ウラン などの主要エネルギー源は すべて輸入されており国産物はひとつもない。その一方で エネルギーの消費量は アメリカを除けば世界のトップクラスである。農業の自給率が盛んに論議されているが その農業もエネルギー依存度が高くなっておりエネルギー供給が止まれば 生産量は激減するだろう。 そう考えれば 農業自給論も的外れと言える。 エネルギーの自給こそが日本にとってもっとも大切なことなのだ。 

現在のエネルギーの主流は石油である。 その石油はアメリカ アラスカ メキシコ中南米 中東 旧ソ連諸国 北海 中国 東南アジア などに存在するが これらを探鉱開発し 生産販売しているのは 大半がメージャーオイルと呼ばれる会社である。
なかでも Exxon-Mobil Royal Dutch Shell が両巨頭となるがかれらの収益力は巨大であり毎年の研究開発費は夫々数千億円にのぼっている。石油がエネルギーとして利用され始めてから 100年を越えたところだが 石油資源は今世紀中に枯渇すると考えられ その後のエネルギー源としての主役は 天然ガスになるというのが専らの見方だ。 しかしその天然ガス資源も大半はメージャーオイルに押えられているのが現実でかれらの覇権は今後長期にわたって続くと考えるのが自然なのである。 

日本でも なんとかエネルギーの自給度を高めようと 石油公団を作って民間の投資を支援してきたが 結果は無残なもので 1兆数千億円の累損を抱えて清算に追い込まれたのは 皆さんご存知のとおりである。 紙面の都合から詳細を書くことはできないが これは所詮無謀な挑戦であったと言わざるを得ない。覇権を握るメージャー オイルと較べて 資金的にも 政治的にも 技術的にも 知識的にも 石油公団ははるかに劣っており せいぜい二番煎じのおこぼれに預かるのが精一杯であったと言える。 個々の企業の立場で考えるのであればそれでも何がしかの利益に繋がるならと思うのも良かろう。しかし 国はそのような考えで国民の税金を使うべきではない。

では 日本はエネルギーに関して 大国となるのは不可能なのだろうか。確かに石油や天然ガスに関しては そのとおりである。 しかし 将来台頭してくるであろう新しいエネルギーには これは当てはまらない。 原子力が革新的技術発展を見ていない以上 これに将来のエネルギーとして多くを望むのは難しい。 そこで期待すべきは究極の無公害エネルギー 水素である。 水素は現在も存在するし 多用途に利用されている。 無公害性に着目され 燃料電池を使っての利用や あるいは 直接水素その物を燃焼する自動車などにも 研究開発が進められている。しかし これらはいずれも水素を利用する技術であって 水素を作る技術ではない。 

現存の水素の唯一最大の欠点は 価格が高いことなのだ。水素は水を電気分解することにより得られることは 学校で教えている。しかしこれでは電気代が高すぎて 経済的に無理がある。 そこで 天然ガスから水素を抽出する方法が最も合理的と見られているが 原料が天然ガスである以上 天然ガス価格を下回ることはない。

つまりこの問題は既存の技術では解決できない。まったく新しい発想に基づく技術が必要だ。こうした雲を掴むような話に 民間の企業が巨額の投資を行うとは思えない。ここでこそ国が乗り出すべきである。水素製造法の画期的発明があれば その経済効果はとても計算できるものではない。エネルギー100%輸入国の日本はその頸木から開放される。農業自給論も 現実味を持つようになるだろう。

このために 国がいくらの資金を投入すべきかは筆者には分からない。しかし例え5兆―10兆円を投入したところでバブルの崩壊後にその後始末の為に国がつぎ込んだ金額と較べれば大したものではないと思うのだが。なにより国民が将来に向っての夢を持てるではないか。

(一本杉)

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