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「刑罰は軽すぎる?」 2004年10月20日更新

先般 NHKの衛星テレビで刑罰を重くすべきか否かについての議論が行われていた。
日本の犯罪が増加傾向にあるのは 刑罰が軽すぎるからだと思えるので 刑罰を重くすることにより 犯罪の増加を防ぎたいというのが現政権の考えらしい。 これに対して 量刑を重くすることがどれ程の犯罪予防につながるか疑わしいし 刑務所の収容人数が増えれば それだけ国民の負担が増えることになるというのが 反対意見のようであった。 しかし いずれも一面しか見ていない意見であったので どうも物足りない感が強かった。

犯罪に対処する方法としては 取り締まりと刑罰があるわけだが この両方を徹底して強化すれば これは警察国家となり 民主主義国家ではなくなる。 したがって民主主義国家では 国民の人権に配慮しながら警察権を行使せざるをえない。 犯罪の予防に効果的なのは 取り締まりであろう。 これを充実させるには警察官を増やす必要がある。 日本の交番は わが国の低犯罪率を支える制度として 国際的に評価されている。 しかし最近は経費削減の圧力からか 交番の数が減っているし そこに駐在する警察官の数も減っている。 これが 犯罪の増加の一因になっているのかもしれない。

この経費削減努力の結果として 犯罪が増えたので 今度は刑罰を重くしようというわけだが これをやると経費が増えるという意見が出てきた。 つまりこの問題は両面を秤にかけて そのバランスを見ながら考えるべきなのだろう。 取り締まりが行ない易く その為の経費も左程掛からないような犯罪に関しては 刑罰を重くする必要はないだろう。 その反対の場合は(麻薬取締りなどが相当する)刑罰を重くすることに意味があるのではないか。

ところで 最近刑罰を極端に重くした例として 飲酒運転の罰金がある。 たかだかコップ一杯のビールを飲んでいたとして 30万円の罰金を取られたという話も聞いている。 この罰金のすごいところは 同乗者にもその半額の罰金 つまり上記の例でいえば 15万円の罰金を科すという点だ。 三人の同乗者が居れば 罰金の合計額は75万円になる。 これは 一般人からみれば 常識を超えた重罰と思えよう。 大体運転者が酔っ払っていたら 仲間がその車に乗るだろうか。 

警察は 罰金を重くしてから酔っ払い事故が減ったと 自画自賛しているようだがここでちょっと気になることがある。 ゴルフ場を出たところで 待ち伏せしていたパトカーに止められ 飲酒運転で法外な罰金を取られたという話をよく聞くことだ。
これは見込み捜査であり 憲法により守られている筈の 人権の侵害ではなかろうか。
刑罰を重くし さらに見込み捜査も行うとなると これは警察権の乱用と言われても仕方あるまい。 警察の仕事は 市民の協力を必要とする場合が多い筈だ。 このようなやり方で 警察に批判的な市民の数を増やすのは 得策ではなかろう。

以上

(一本杉)



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