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「原油価格高騰時に起こりそうなこと」 2004年11月04日更新

現在原油価格は異常とも言える高値で推移している。原油の最大の供給地域
である中東の政治情勢が極めて不安定であるからだ。ところで こうした時期に往々にして起こるだろうことを考えてみたい。

石油は燃料としてのみならず 化学原料としても幅広く使われているから原油価格の高騰は当然ながら 広く一般に製品コストの増加を招き 一般物価を引き上げる作用を果たす。長く続いたデフレ傾向に歯止めをかける効果があるだろう。 これはむしろ現況下良いことかもしれない。

一般に石油代替エネルギーと言われる 風力・太陽光・潮力などを利用した
エネルギーも 通常は石油との競争力に乏しく なかなか普及しないが原油価格が現在の水準で推移すれば 勢いを増す可能性が高い。

石炭も競争力を増すだろう。 電力会社などは かねてより石炭の使用を増加させているが 現状を前提にすれば かなり安いエネルギー源であり 石炭への傾斜が強まっていっても 不思議ではない。 原子力も同様だが これは様々な問題を抱えたエネルギーなので 単純には比較できない。

では 石油の世界ではどんなことが起こりそうだろうか。世界には 規模が小さいとか その他の理由で 原油の存在は確認されているが 経済的に見合わず 開発されずに放置されている油田が数多くある。これらも 高値原油を前提にすれば 経済性を復活してくる。 

こうした油田を持っている産油国や産油会社は 絶好のチャンスとばかりに売りに出してくるだろう。 なにしろ 何の役にも立たなかった油田が 相当の金額で売れるとなれば こんな有難い話はない。 

一方 かねてより油田の開発をやりたかったが 売り物がなくできなかった 会社もある。 こうした会社にとっては これまた念願成就の絶好の機会と
映る。 こうして 商談が成立するが 過去の例からすると これは買った方の負けである。 

消費者を馬鹿にしてはいけない。 石油が理不尽に高くなれば 消費者は
消費量を減らしたり 他のエネルギーに代えたり 自己防衛を始める。
石油消費量の20%程度は無駄遣いと思われるから こうした自己防衛が
始まれば その位の消費量は簡単に減る。 こうした生産者と消費者との
勝負の帰趨は明白だ。 消費者の勝ちである。 なぜなら 生産者にとって
需要が20%も落ちると 財政的に大問題となるからだ。 一方の消費者に
とっては 無駄遣いを止めただけだから 痛くも痒くもない。

したがって 生産者は消費者を取り戻すために 原油の値下げに向うことに
なる。 高値の時期に油田を買った会社も 当然値下げをしないことには
収入がゼロになりかねない。 つまり 大損をすることになるのだ。

異常に値上がりした原油価格は 遠からず間違いなく妥当な水準まで値下がりします。 くれぐれも 高い買い物をして 大きな損を生ずるような愚行は
なされませんように。

以上

(一本杉)

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