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「原油高への対応」 2008年02月05日更新

石油自給率がゼロに近い日本は原油価格高騰の影響をもろに受ける立場にあるのだが、これに対応する方策としては石油消費量を減らすしかないのである。供給が一定であれば、消費量の減少は需給関係を供給過剰へと変化させ結果的に原油価格の低下につながるであろう。そしてこれは現在大きな問題として世界中で話題となっている地球温暖化防止にも貢献することになる。

こうした観点から昨年末の小稿では自民党の灯油補助金政策を批判し、消費を減らすことを支援する政策が正しいと指摘したのである。ところが今度は驚いたことに野党の民主党が同じようにおかしな政策を提案し、これを国会論戦の中軸に据えて次回選挙を有利に進めようとしている。つまりガソリン税の引き下げである。

対象となるのはリットル当り25円の揮発油税暫定税率だ。第一次石油危機の後の高価格原油により引き起こされたインフレの時代に二年間の暫定法律として生まれたものだがその後30年以上にわたって据え置かれている。道路特定財源として、本来一般財源で賄われるべき道路関連事業を担ってきた。この法律誕生のいきさつは、ガソリンの価格が上昇した為価格に占めるガソリン税の割合が縮小したこともあるが、同時にガソリンの消費を抑えて価格上昇を牽制する意味合いもあったと記憶する。その後石油価格が落ち込みガソリン店頭価格の7割が税金という時代もあったのだから、その頃にこの暫定税率廃止を訴えていれば随分と迫力があったろう。

しかし現在の状況は30年前のそれとよく似ている。ガソリン税率は現在54円であるがこれは店頭価格の3割程度にしかなっていない。一方原油の価格はここ数年で3倍にも高騰しており、その上限が見えない状況である。もし30年前に暫定税率を制定したのが正しかったとするなら、現在もまたガソリン税は引き上げられるべき状況なのである。さらに25円追加して暫定税率を50円としても店頭価格に占める税金の割合は50%以下に過ぎないが、消費抑制効果は相当なものとなろう。

こうした時期に暫定税廃止を唱えるのは如何なものか。ガソリンが25円安くなることをどう思いますかと聞かれれば、誰でも歓迎しますと答えるだろう。一般に考えれば高いより安いほうが良いに決っている。これがマスコミなどによる世論調査の結果である。しかしこれが本当に国のためになるものなのだろうか。民主党も薄っぺらな党利党略に走ることなく、もっと厚みのある論議を国会で重ねて欲しいものである。自民党もむしろガソリン増税の必要性を唱えて国民を説得するくらいの見識と意欲をもって民主党に対峙する姿勢を見せられないものか。日本丸の舵を握る者は船の進路をしっかりと見つめなくてはならない。

(一本杉)

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