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「小沢民主党に期待するもの」 2006年06月19日更新

今国民に「日本はこれからどういう国になろうとしていると思いますか?」と聞いたらどんな答えが返ってくるだろうか。おそらくはっきりと答えられる人は殆んどいないのではなかろうか。それはその筈、日本には明確な国としてのヴィジョンがないからである。 

小泉首相は改革を旗印に日本の社会の無駄を排除すべく努力しそれなりの成果を挙げたといえる。しかし初期の目標を達成したとは言いがたい。すべての面で旧勢力との妥協が見えるからである。現実に起こっている不都合なことに対処したのは確かだが、将来ヴィジョンを明確にしてその達成のために一直線に進んだわけではない。

前例のないほど良好な日米関係を築いたと言われるが、現実は英国以外の欧州からの支持を失って孤立状態になったブッシュ親分に忠誠を誓っただけのことである。これもヴィジョンに基づいた関係構築ではない。一方で中国や韓国との関係は悪化したままである。

さらに憲法9条を変えていわゆる集団的自衛権を認め、日本が外国に出かけていって戦争に参加できるようにしたいらしい。防衛庁を防衛省に格上げして、自衛隊の士気を高める事も考えているようだ。学校では子供たちに愛国心を植えつける教育を行うという。戦没者を祭る靖国神社参拝は個人的行為であるとして控えるつもりはないそうだ。もっと気になるのは共謀罪なる犯罪を明記し、仲間内で犯罪になりそうなことを話し合っただけでも逮捕できるようにしたいと考えていることだ。これは聞いただけで戦中の特高を連想させるおぞましい話である。

こうして見てくると、ヴィジョンはないが意図はあるようだ。つまり戦前の日本に戻したいようである。しかしこの意図を国民の前で明確に述べたら、国民の猛反発を受けて自民党が打撃を受けるのは明白なので、すべてばらばらに事を進めて国民に本当の意図がはっきり見えないようにしながら、目的を達成してしまおうと考えているのだろう。

もしこの推測が当っているとしたら、日本は現在非常に危険な状況にあると言わざるを得ない。米国が軍事帝国化してきているのは明らかであり、これに対する世界的反発も強くなってきている。歴史的に帝国主義は、結局そのコストを負担しきれなくなって崩壊している。米国だけがその例外となるというならその根拠を示さねばならないが、これは難しいだろう。つまりブッシュ路線は遠からず修正を余儀なくされると見るのが妥当であり、そうなった時の日米関係はかなり変る筈である。その時に悪化した東アジア関係が残されていたら、日本はどのような道を歩むのだろうか。

こう考えると、小沢民主党には是非日本の将来ヴィジョンを確立して、世界の中での日本の役割をはっきり示し、リーダーシップを発揮して世界の平和と繁栄に貢献できる国になることを目指して努力して頂きたいと思うのだが。

(一本杉)

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