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「灯油代補助は正しいか」 2007年12月26日更新

政府が寒冷地の高齢者世帯や母子家庭に灯油やガソリン代として五千円から一万円を補助し、その予算として500億円を計上するという。一体全体これはどのような考えに基づいた発想なのか理解に苦しむのである。

もし石油価格の上昇が一時的な現象であるというならこれも理解できる。しかし現在の石油も含めた資源価格の上昇は、そうとは思えない。資源価格の上昇を支えているのは、有限である資源をあたかも無限に存在するかのように消費する経済の仕組みにあるのではないか。そして巨大人口を抱えた新興国経済の台頭が、この問題を一気に浮き彫りにしているのが現状だと理解している。だとすれば今後余程のことがないかぎり、資源価格が元に戻る事は考えられない。

はたして政府は今後毎年この補助制度を継続していくつもりなのだろうか。
石油価格が上昇を続けたら補助金も毎年増額していくつもりなのだろうか。
この補助金は受給者が灯油を買って消費したら、あとにはなにも残らない。
その瞬間にすべてがなくなり、500億円の支出記録だけが残るのである。つまり経済波及効果はゼロである。だとすればそれよりもはるかに賢い方法がある。
以下に列記してみよう。

1.灯油に比べ電気やガスの料金の上昇幅ははるかに小さいのだから、こうした代替燃料に転換する費用を補助する。
2.保温効果の大きい衣料購入費を補助する。
3.窓ガラスなどにはりつける保温シートの購入費を補助する。
4.保温のための家屋改修費を補助する。

これらはいずれも家庭の燃料支出の軽減に寄与するものであり、灯油補助金のように毎年おなじことを繰り返す必要がない。さらには経済波及効果を伴うものであるから、やがて税収の増加というかたちで補助金の何割かが国庫に還流してくることも期待できるのである。こう考えれば単なる灯油補助金よりはるかに優れた対策であることは歴然としている。衆知を集めればもっと良い策も出てくるだろう。とにかく線香花火のようにぱっと燃えて後にはなにも残らない灯油補助金のような愚策は採るべきでないと思う。

(一本杉)

p.s. 今年もこれが最終稿となりました。一年間おつきあい頂きました皆様には心底よりお礼を申し上げます。来年も引き続き寄稿を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。では どうか良いお年をお迎えください。

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