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「正念場にきた民主党」 2009年11月26日更新

民主党がマニフェストによる公約の実現にむけて様々な動きを見せている。公約を実行に移す姿勢を明白にしたことは充分評価に値すると言えよう。然しこの先は難航の見通しとなりそうだ。その原因はマニフェストそのものにあるのではないか。マニフェストは衆議院選挙を控えて国民にアピールする為の最も重要な手段として慌しく作られた。そして選挙を意識して国民うけのよいものを列挙した。その結果として飴をばらまいたようなものになってしまったのである。これでは収拾をつけるのが大変だ。

本来マニフェストとは日本をより良い国にするためにはどういう針路を進むべきであるかを明示し、そのために行うべき政策を列挙して国民の信を問うべきものであろう。当然その中には甘いものもあれば苦いものもあってよいのである。いやむしろ苦いものの方が国民の意識を確かめるには有効であろう。ところが今回は最も重要な針路の明示が欠けている。さらに悪いことに甘いものばかりを並べたてた。これでは実行段階に入って多くの矛盾が表面化し混乱を招くのは当然だ。

たとえば民主党はガソリン税を大幅に引き下げ高速道路を無料化するという。これはCO2削減に積極的に努力すると表明した首相発言に矛盾する。ガソリンを安くし高速道路料金を無料化するということは明らかに国民の移動を電車から自動車に誘導する政策であり、必然的にCO2の排出量がふえるからである。

さらに驚いたのは最近になって石油化学原料であるナフサに課税する意向が見えてきたことだ。ナフサは粗製ガソリンと訳されているが、精油所の蒸留塔から出てくる最も軽い溜分でありこれを加工してオクタン価を上げることによりガソリンが製造されるが、石油化学原料としてはそのまま使用される。そしてあくまでも化学原料であることから世界的に免税扱いされており日本でも同様である。これに課税するとその分日本の化学産業の国際競争力を削ぐことになるのだが、ガソリンを減税するならナフサに課税しようという財務省の意地の悪いやり口が見え隠れしていると感じるのは筆者だけだろうか。

さらに先端技術の開発や高度教育支援などは日本の将来を見据えたら欠かすことの出来ない分野だが、こうしたところにも予算削減の鉈がふるわれているのをみると基本針路の確立が急務であると思わざるをえない。民主党は政権奪取の戦略は上手くやったといえるが、今後予想される混乱を乗り越えその政権を確固たるものにするためには政権維持のための戦略を確立する必要があるだろう。選挙のためのマニフェストにこだわる必要はないと思う。結果がよければそれでよいのだ。

(一本杉)

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