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「この一年を振り返る」 2009年12月22日更新

歳とともに月日の流れはどんどん速くなり 今年もあっという間に過ぎ去ろうとしている。もう一年経ったかと感じるのだが、ゆっくり振り返ってみるとけっこう中身の濃い一年だったことがわかる。

去年の9月にバーレル当り150ドルの最高値をつけたWTI原油は 米国のサブプライムローンの破綻に始まる金融危機の影響で暴落場面となった。12月の「どこまで落ちる」と題した本欄で予想される底値を30ドルに置いたが そこまで行かずに少し手前で原油は反騰場面を迎えた。そこで今年6月の「原油価格の今後は」と題した本欄では当面の天井を75ドルに置いた。まもなく価格はこの天井を若干上回ったが長続きせず現在は70-75ドルで推移している。このように今年の原油価格はかなり上げ下げの激しい一年間であった。来年の価格も不安定なものとなろうが 鍵を握るのは金融危機対策として世界各国の中央銀行が提供した巨額の資金だろう。この回収が後手にまわるとその資金が市場にだぶつきバブルを招くことになり原油価格も急騰の可能性がある。

つぎに日米ほぼ同時の政権交代も今年のビッグニュースであった。まずアメリカでは歴史上初の黒人大統領が生まれた。政権も共和党から民主党に移り政策にも大きな変化が生じた。その後日本でも自由民主党が衆議院選挙で民主党に大敗し鳩山政権が生まれた。自民が野に下るのは実に50年ぶりのことであった。この日米の政権交代を可能にしたのは変革というキーワードである。日米ともに国民が既存の政権に疑問を持ち変革が必要と感じたのだろう。とにかく変わることがまず大事でその後のことは見守っていけばよいということではないか。オバマ大統領も鳩山首相も就任当初は圧倒的支持率を誇っていたが その後人気が急降下しているのを見ると この見方が裏づけられていると思う。この両者の評価が試されるのは来年のこととなる。

年末に開催されたCOP15も重要な意味を持ったイベントであった。地球温暖化対策を世界中の国で合意しようとするものだが 先進国や発展途上国や新興国が夫々の国益を背景に意見を述べるのであるから全会一致が原則と言ってもこれは不可能に近いことに挑戦しているようなものだ。今回の結果としてはコペンハーゲン合意なるものに全会が留意するという形で決着したようだが 少なくとも世界中の人々に地球温暖化問題をより身近なものとして受け止めてもらえる効果は充分にあったといえよう。また鳩山首相がこの会に先立って温暖化ガス排出量の25%削減を声明したが これはすこぶる政治的な発言であり削減率を明示する国が後に続いたことを見てもこれまでにない快挙であったといえよう。国内にはこうした発言は国益を損なうと批判する向きもあるようだが 日本が世界に貢献できる国であることを示すにはこうした行動こそ期待されているのではないか。この会は来年にはメキシコで開催されるようだが そこでさらに前進が見られることを期待したい。

本欄も今回が今年最後となりました。一年間お付き合い頂きました皆様に厚く御礼申しあげます。来年も一月から寄稿を予定しておりますのでよろしくお願い致します。どうぞ良いお年をお迎えください。

(一本杉)

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