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「米国と中国」 2010年02月04日更新

世界情勢を考える時 今年の一年間で最も注目されるのは米国と中国の動向だろう。米国は金融危機の修復がまだ終っていない。失業率は大きく膨らんだままであり 雇用を増加させないと社会不安につながるおそれがある。ケインズ経済学にしたがえば公共事業の増大が特効薬だが すでに米国の財政赤字は史上最大となっている。さらに赤字を増やすべきか。むずかしいところだ。財政の赤字を減らすには膨大な軍事費の削減が必要だが アフガニスタンやイラクでは泥沼状態となっている。これから抜け出すのも容易ではない。米国は20世紀において強力な軍事力を背景に世界で指導権をにぎった。折角苦労して手にいれた指導権を手放すというのは 当然ためらいがあるだろう。

一方中国は共産党独裁の国であるから打つ手は早い。発展途上というのは目標が明確で ある意味で単純であるから危機対策も即座に講じられる。米国の 4倍にもなる人口を抱えておりその内需が経済をしっかりと支えてくれる。これが世界中で経済が大きく落ち込んだ昨年においても中国が経済発展を維持できた要因といえよう。中国のGDPは昨年日本を抜いて世界第二位におどりでた。しかし国民一人当たりでいうとまだ日本の一割にすぎない。まだまだ広大な発展の余地があるのだ。ちょうど日本の戦後経済が急上昇を始めた1960年代に相当するのではなかろうか。もしそうだとすると10年後の中国はそら恐ろしいことになる。

米国がこうした事態に危惧を持つのは当然だろう。もし中国が近い将来世界一の経済大国になったら米国はどうなるのだろうか。それでなくとも中国は現在世界一の米ドル保有国であり世界一の米国債の保有国なのだ。米国を会社に例えるなら中国は筆頭株主なのである。その大株主が世界一の経済大国になったら米国は何をやるにしても中国の顔色を窺いながらやるしかない。そんな窮屈な思いをするのはたくさんだと米国が思っても不思議ではない。しかしでは米国が追いすがる中国を引き離すパワーを発揮できるだろうか。どうやらそれも難しそうだ。

となると唯一の解決策は相手が強くなりすぎる前にけんかを売って叩きのめすことだ。非現実的な解決策だと思うかもしれないが 米国を含めた諸外国のこれまでの歴史を見ればあり得る選択だと理解できるはずだ。中国もその程度のことは先刻ご承知だから軍備増強には怠りない。米国はこうした中国の動きをけん制するために台湾の軍備増強に力を貸したりしている。つまり中国の台頭は中・米関係に緊張を生むものであり 米国の力が弱まるとその緊張の度合いが高まるという構図だ。今年一年が緊張を高める方向に向かうかあるいは弱める方向に向かうか じっくりと注視する必要がある。それと同時に諸外国は世界が大喧嘩に巻き込まれるようなことのないように英知を働かせ平和な地球の実現に最大限の努力を行うことが求められる。

(一本杉)

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